誤解だらけのリフォーム/一級建築士Yuuこと尾間紫のブログ

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女性目線の賃貸リノベーション

ご縁があって、事業者向け月刊誌「月刊不動産」という雑誌に、リノベーションについての原稿を2回にわたって書かせていただくことになりました。

今、賃貸業界は空室対策のために様々な取り組みを行っています。ただ古いだけのアパートにはあまり魅力はありませんが、そこに誰かのニーズを満たす付加価値が存在すれば、それは魅力ある物件として再生することができます。

今回の記事では、実際にリノベーションによって全室満室を実現した2つの事例をご紹介しながら、消費行動におけるキーパーソンとなる女性心理についてご紹介しました。

様々な場面において、女性が「住」の方向性を主導する時代なのだと、日々実感させられています。

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タンスの角に小指をぶつける家

背の高い外国人が日本に来て、低い鴨居の下を毎日背中を丸めてくぐっていたら、いつの間にか猫背が癖になってしまった、そんな話があります。

家は人の習慣や家族関係を変えてしまう程の大きな影響力を持っています。例えば、夫婦関係は寝室のプランに大きな影響を受けていますし、夕食の品数はキッチンのプランに、親子関係は子ども部屋の位置や作り方に、そしてこの先の健康と安全も家の作りに大いに関係しています。

 

最近、タンスの角によく小指をぶつけるようになったと言う人がいました。小指は身体感覚のズレがあり、身体の中でもぶつけやすい個所と言われていますが、その家をよく見てみると、その間取りに原因がありました。

その家では、ベッドから降りてトイレに到着するまでの途中にタンスが置いてありました。年を取るとトイレに行く回数が増えます。夜中に起きて暗い中そろそろと歩いて行ったり、朝起き抜けの寝ぼけた状態でふらふらと移動したり。

明るい時にはなんともなかったものが、夜間や早朝には足の小指はもちろんのこと、やもすれば身体をぶつけてしまう可能性もある危険な道のりになっていたのです。そこでタンスの置き場所を少しずらし、トイレまでの移動経路に掛からないようにしたところ、それ以来小指をぶつけることがなくなりました。

 

ベッドからトイレまでの道筋の途中に段差や階段、タンスなどのでっぱりがあるのはケガのもとです。他にもよく見かけるのが、キッチンのシンクからテーブルまでの距離が遠く、途中に腰をぶつけやすいカウンターがある家です。配膳の際には熱い汁ものを持って移動することもあるので、年をとったらできるだけ近いほうが安全に便利に暮らせます。

同じように洗濯機から物干し場までは、たくさんの濡れた洗濯物を抱えて歩くので足元が見えにくく、高齢者には危険な道のりになります。

 

困るのは段差や階段だけではありません。以前、私が足のけがで、1年ほど車いすで生活していた時に苦労したのが、奥が行き止まりになっている対面キッチンでの作業でした。

キッチンに車いすで入っていくと、Uターンできないのでバックで戻る必要があります。しかしキッチンの上には包丁や火に掛かった熱い油があり、そんな中で慣れない車いすをバックさせるのはとても怖いことでした。

もし奥が行き止まりでなく、洗面所や廊下につながっていれば、向こう側にすっと抜けることができたでしょう。キッチンの周りを行き止まりなく、ぐるぐる回ることができたら、もう怖い思いをしてバックする必要もありません。

 

家の作りのちょっとした差で、小指をぶつけやすかったり、これからもずっと安心に暮らせたり。家のカタチが人の暮らしに与える影響は想像以上に大きなものなのです。

捨てるのに躊躇した3つのもの

今回、事務所と住居の同時引っ越しで、とにかくいろいろ捨てました。もともと持ち物は少ないほうなんですが、引越し屋さんが準備してくれた段ボール箱のうち、新しいところへ運んだのは2割程度でしょうか。つまり8割以上はゴミでした。

引っ越しやリフォームは持ち物を見直すきっかけになるので、家のダイエットになります。 私も今回の引っ越しにあたり、自分にとって本当に必要なものだけで暮らそうと決意をしていました。でもそれでも捨てるのに躊躇したものが3つありました。 

1つめは、20年ほど前に購入したカシミヤのコート。自分にはかなり高価で質のいいものだったのですが、今では時代遅れのデザインで、このままにしておくのはもったいない!と思い、昨年お直しに出したものでした。でも直しても何となく今のデザインとは違ってしっくりこない。結局この冬も一回も着ないままになっていました。 

2つめは、ホームベーカリー。数年前に購入。これも高い割に活用できていなかったので、元が取れていない感がありました。そして今後は家族の体調の問題で、使う予定はほとんど無し。 取説にはパン焼き以外にもいろいろ使えると書いてありますが、そのいろいろをするとも思えず。

3つめは、ダイニングテーブル。16角形の無垢材で作ったもので、そろいの椅子が4脚。20年近く前に思い切って買ったものなんですが、新しいところには大きすぎて入らないので、持っていくことはできません。 

衣類、家電、家具とバラバラですが、捨てられない理由は3つとも同じで、高かったのにもったいないという思いでした。どうしてもその当時に払った「お金」を捨てるような気持ちになってしまうんですね。 

吹っ切ることができたキッカケは、「今までありがとう」と思えたから、としか言いようがありません。これからの私の暮らしには不要であることを改めて確認し、これまでの暮らしを支えてくれたことに感謝を込めて捨てました。

ちなみに捨てた後、未練は無し、生活にも全く影響なし。持ち物の8割を捨てても問題無いんだと我ながら驚いています。 

ちなみに先日、「女子会」(あえてそう呼ばせて頂ければ)で、今回捨ててスッキリしたもののひとつとして、「長く履いていると足が痛くなるけれど、高かったしいい靴なので近場に行く時しか履かないハイヒール」と言ったら、たくさんの共感を頂きました。女性ならではの、あるあるです。