以前、父がお墓を購入しました。海が見えるお墓だと言います。かたぶつで現実的な父にしては、なかなかロマンチックなことをするなーと思っていたのですが、見に行ってみたら、お墓は海を背にして立っていて、肝心のお墓からは全く見えないのです。
海、見えなかったよと、父に伝えると、お参りしていると海がきれいに見えるだろう?死んだらどうせ何も見えないんだから、墓からは見えなくていいんだよ。それよりお参りに来た人が楽しいほうがいいだろうと、笑っていました。
マンションやホテルで海が見える部屋、と言えば、中から海が見えるのが当たり前と思っていたので、海の見える墓なんて言われたら、当然お墓の中から見えるものだと思い込んでいました。お参りに来る人という、もうひとつの視点が存在することをすっかり忘れていたのです。
海が見えるお墓とは、誰が海を見るのか?私が思いつかなかった優しい視点、そしてそこに託された思いをしみじみと感じています。